医療職は肉体労働です。特に看護師や看護助手、医療事務に至るまで、首や腰の病気を患い退職を余儀なくされる方も大勢います。
今回はそういった仕事を続けられないまで悪化しないように首や腰の疾患について医師監修のもと解説致します。第1回は「首の症状」です。
首の痛みの原因には、骨や筋肉、筋などの問題によるものもあれば、皮膚や血管の問題、リンパ節の腫れなど、さまざまなことが考えられます。
自然と治っていくことも多い首の痛みですが、時間がたっても治らない、繰り返しているなどの場合には注意が必要です。本記事では首の神経痛に関連する情報を4つの段階に分けてご紹介します。
首の付け根が痛む!4つの原因
首の付け根が痛む原因は大きく分けて以下の4つです。
- 姿勢の悪さ
- 骨格のゆがみ
- 加齢
- 病気
それぞれ詳しく解説していきます。
姿勢の悪さ
首の付け根が痛む原因の1つが姿勢の悪さです。例えば猫背になると骨盤が後方に傾くため、バランスを取ろうと頭の位置が前方へスライドします。
頭の位置が前方へスライドすると周辺の筋肉に負担がかかり、首の違和感やこわばりを生じやすくなります。
デスクワークをする姿勢が悪い方に首の違和感やこわばりが多く見られるのも、長時間の座位で姿勢が悪くなる傾向にあるためです。
首の筋緊張はやがて血管を圧迫して痛み物質が生成されます。最初は筋肉痛のような痛みを感じる程度ですが、血行不良が続くと痛みが慢性化する傾向にあります。
骨格のゆがみ
骨格のゆがみも首の付け根が痛む原因です。パソコンやスマホの見過ぎによりストレートネック(クレーンネックやスマホ首とも)になると、頚椎(けいつい)のアーチ構造が損なわれるため、首の筋肉へと大きな負担がかかります。
筋緊張により頚椎がまっすぐに見えているだけであれば、筋緊張の緩和によりストレートネックを改善できる可能性があります。
しかし、長期間に渡ってストレートネックの状態が続くと、骨自体が変形して元に戻すことが困難となるため注意が必要です。
加齢
加齢も首の付け根が痛む原因の1つです。椎骨(首の骨)と椎骨の間でクッションの働きをする椎間板は、加齢によって水分が減少しやすくなることが分かっています。
椎間板の水分が減少すると首の骨にかかる衝撃をうまく緩和できなくなり、結果的に痛みが生じやすくなります。
病気
何らかの病気が原因で首の骨や組織に異常をきたすと、急激な痛みが首に生じる可能性があります。首の痛みを伴う病気に関しては次章で詳しく解説します。
院長監修記事 梅林 猛 東京脊椎クリニック院長/日本脳神経外科学会専門医/日本脊髄学会指導医 医療法人メディカルフロンティアでは脊椎手術に特化した医療施設(東京脊椎クリニック)を運営しています。その施設の責任者である梅林猛医師監修の下、脊椎疾患や手術術式についても寄稿していきます。
首の痛みを伴う病気と症状
首の痛みを伴う代表的な病気や症状は以下の通りです。
- 首こり・肩こり
- 寝違え
- 外傷性頚部症候群
- 頚椎症
首こり・肩こり
首の痛みを伴う症状としてよく知られているのが首こり・肩こりです。先述の通り首や肩の筋肉が硬くなり血管を圧迫すると、発痛物質が生じやすくなります。
主な症状は首すじや首の付け根から肩・背中にかけての張りやこり、痛みなどの不快感ですが、場合によっては頭痛や吐き気を引き起こす可能性があります。
寝違え
寝違えも首の痛みを伴う症状の1つで、起床時に首から肩にかけての痛みを生じる点が特徴です。
通常は右だけ、もしくは左だけに症状が見られ、顔を動かしたときに痛みを生じるケースもあれば、何もしなくてもズキズキと痛むケースもあります。
医学的には急性疼痛(とうつう)性頚部拘縮と呼ばれており、多くは睡眠不足や寝るときの姿勢など日常の生活習慣が原因となって起こります。
外傷性頚部症候群
首の痛みを伴う病気の1つが外傷性頚部症候群です。外傷性頚部症候群はむち打ちという名前でもよく知られており、交通事故による首への衝撃のほか、柔道やラグビーなどコンタクト系のスポーツが原因で発症することもあります。
外傷性頚部症候群は頚椎周囲の組織の損傷程度により、主に以下の4種類に分類されます。
- 頚椎捻挫型
- 神経根型
- バレー・リュー症候群型
- 脊髄損傷型
4種類の外傷性頚部症候群について、特徴や症状を簡単に紹介します。
頚椎捻挫型
頚椎捻挫型は軽症例の外傷性頚部症候群で、首や肩の痛みなど寝違えとよく似た症状が見られます。数ヶ月ほどたつと自然に回復することも珍しくありません。
神経根型
事故などによるダメージが頚椎の神経根に加わると、首や肩の痛み以外に腕の痛みやしびれも出やすくなります。
バレー・リュー症候群型
バレー・リュー症候群型の外傷性頚部症候群は、頚部の自律神経および椎骨動脈が障害された結果として発症し、めまいや耳鳴りなど自律神経系の症状を伴う点が特徴です。
脊髄損傷型
事故などによるダメージが脊髄(中枢神経)に達すると、手足のしびれや歩行障害、排便・排尿障害を発症することがあります。
頚椎症
頚椎症(けいついしょう)は加齢による椎間板の変性や、椎骨と椎骨をつなぐ椎関円板の変形などが原因で骨棘(こつきょく)と呼ばれるトゲが生じ、神経根を刺激することで痛みを生じる病気です。
首から腕にかけて痛みやしびれが生じ、特に頸椎を後ろに反らせると痛みが強くなる点が特徴です。不良姿勢や交通事故・スポーツ中の衝突などが原因で発症するケースもあります。
院長監修記事 梅林 猛 東京脊椎クリニック院長/日本脳神経外科学会専門医/日本脊髄学会指導医 医療法人メディカルフロンティアでは脊椎手術に特化した医療施設(東京脊椎クリニック)を運営しています。その施設の責任者である梅林猛医師監修の下、リハビリテーションや脊椎疾患、手術術式についても寄稿していきます。
首の神経痛の解消方法-自己ケアとセルフケア方法-
首の神経痛を解消するための主な対処方法は以下の3つです。
- 姿勢に気をつける
- 血行を良くする
- 市販薬を使う
姿勢に気を付ける
首の神経痛を解消するセルフケア方法の1つが、普段の姿勢やデスクワークでの座り方に気を付けることです。
常に片側だけでバッグを持ったり、足を組んで座ったりするなど、身体の片側だけに体重がかかる姿勢は避けるよう心掛けましょう。
デスクワークの際には坐骨(ざこつ)を意識して座り、上半身に無駄な力が入らないようにすることが大切です。上半身に無駄な力が入らない座り方のポイントは以下の通りです。
- 前かがみで椅子の前に立ち両手を両ひざにつく
- 前傾姿勢のままお尻を椅子に乗せる
- 両手で両ひざを押しながらゆっくりと上半身を起こす
ゆっくりと上半身を起こす際に、坐骨に体重が乗ることを意識しましょう。坐骨に体重が乗った座り方を続けると、首の神経痛だけでなく頭痛や腰痛の改善も期待できます。
血行を良くする
首の神経痛を解消するためには、普段から血行を良くすることが重要です。肩や首まわりの血行を良くするためには、日常的にストレッチを行い筋肉や関節の柔軟性を高めておきましょう。
特に腕を大きく回して肩甲骨を大きく動かすようなストレッチや、ラジオ体操のような動きのあるストレッチ(バリスティックストレッチ)がおすすめです。
また、適度にストレスを発散すると自律神経のバランスが整い、血行を促進しやすくなります。ストレッチをした際に痛みが生じる場合は中断して様子を見ましょう。
市販薬を使う
市販薬を使うことも首の神経痛の治し方の1つです。市販薬は大きく内服薬と外用薬の2つに分けられます。
内服薬
首の痛みが強い場合には、痛み止めと言われる消炎鎮痛剤の服用が有効です。ただし、痛み止めで症状を感じなくなっている間に無理をして動くことは避けましょう。
また、化学的に製造された医薬品には副作用のリスクがあるため、可能であれば医師の診察を受けた上で処方してもらうことがおすすめです。
外用薬
首の痛みを緩和するためには湿布などの貼り薬を使用することも有効です。しかし、首のような人目につく場所は湿布を貼ると目立つため、塗り薬を使用する方法もあります。
まとめ:長引く首の痛みは危険!病院で受診を!
首は脳と直結する非常に重要な部位のため重症度は他の部位と比べると非常に高く、最悪の場合には脊髄損傷など今後のご自身の生活の質(QOL)を損ねる大問題へと発展する可能性があります。
そのため、首や首まわりに異変を感じたら、まずは早急に専門の病院を受診して詳しい検査と適切な治療を開始することが大切です。
寝違えなどの一過性の症状であれば過度に心配する必要はありませんが、痛みやしびれが慢性的に続く首の神経痛の場合は整形外科を受診することがおすすめです。